経済学の杜(ミラー)

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谷崎潤一郎『春琴抄』

谷崎潤一郎春琴抄

人生最大の教科書であり、これから国際社会に挑戦する学生に紹介する推薦本の1つです。

谷崎ほど、経済をとらえ、描いた人は他にはいません。特に春琴抄は開港、いわゆる近代日本のグローバル化がもたらした時代背景をあまりに美しい日本語で表現しています。

 

 

 多くの読者は、この小説の美しさに惑わされ、背後の時代背景を読むことはしないでしょう。もちろん、その必要もありません。

 

佐助の失明は、日本が開港した時であり、その後、佐助と春琴は光のあたらない桃源郷へ到達します。

 

 

 経済的に言えば、グローバル化によって、没落したのは鵙屋であるということ。薬問屋はもともと海外との交流を許可されていた企業であり、グローバル化によって没落するのは同じグローバル企業。そして、「大阪」という伝統的な巨大なマーケットが裁定取引や流通システムに敗北したのです。

 夫婦という絆を基礎とした日本文化は、グローバル化ごときではビクともしない強靭なものでした。

 

 さらに、もっとも生産性が高い組織は「夫婦」(婚姻とは限らない。「家」と言っても良い)であること。たぶん、佐助はその後達人になったのであろうけど、それは佐助と春琴の間から生成された統合的な力であって、そのどちらか一方ではないということ。

 

 モノが創造されるところは光があたらない場所であり、あまりにおぞましく、一般の人は見ない方が良いところでもあります。